玉川侑香
詩人・エッセイスト
1947年 神戸市生まれ。
神戸市在住。
生まれてこのかた神戸市兵庫区をでたことがないという「井の中のかわず」人間。
それだけに、震災で自分の町が壊れるということにおおきな衝撃を受けたのです。「家」「町」というものを含めて「私」という存在があることを発見しました。
震災を語り継ごうーーそれは命の在りかをかたること、「生きる」ということを伝えることだと思いました。長年、詩やエッセーを書いてきたテーマは日常茶飯事の身近なことですが、そこへ突然割り込んできた震災という「非日常」は、当然のごとくあった「日常」をなんと遠いものにしたことでしょう。
その日から人々の「日常」へ帰ろうとする長い長い旅が始まりました。
となり近所のおっちゃんもおばちゃんも、もちろん私もです。
そんな風に瓦礫の中から生きようとする人々の逞しくて優しい姿がすきでした。そして、なんだかたくさんの詩になりました。歌にもなりました。絵本もあります。
あちこちで朗読もしています。それらはみんな、震災後を共に生きてきた人たちからのメッセージです。
あれから22年。平野のまちも少しずつ変わりました。
私が営業していた「平野市場」はもうありません。今はそこに食料品スーパーが建っています。「ふとん屋」も廃業して、今はギャラリーひとつで、震災後にあたたかいつながりをもらったアーティストのみなさんの作品展などを催しています。
また、朗読や音楽を身近で楽しめるようにライブなどもして楽しんでいます。市場で「いちばぎゃらりぃ侑香」を開いた時、峠の茶屋のような存在になりたいと思いました。旅の途中で人と人が出会い、お茶をのんで話しに興じて、またそれぞれの道を歩んでいく。そんな居場所になればと思いました。
今もその想いは変わりません。平野のまちは東西と南北の道が交わるところ。人や文化が交わり豊かに育つところなのです。
この小さなギャラリーで、たくさんの人たちとの出会いを感じていただければと思います。


内容紹介
「父親の死後、原稿用紙にまとめられた戦争中の手記が大量に出てきた。初めて目に触れたそれらは、若き日の父が体験した生々しい戦争の記録であった。
父は第二次世界大戦中、軍属としてインドネシア・アンボン島で「戦時木造船」造りに従事していた。と言っても父は船大工のような技術をもっていたわけではない。父の本音は赤紙一枚で招集される徴兵から逃れるため軍属になることを選んだのである。
この戦争という時代をどのように生きたのか、戦後70年という節目を前にこれは貴重な資料となると感じ、出版を思い立った。
しかし、あまりの膨大な量を纏めるには、私の手には余ってしまい、困惑していると、ふと「詩集にすればいいんだ」という考えが浮かんだ。そうだ、私は詩人なんだから、、、そういう理由で、父の手記を基にした詩物語「戦争を食らう」は生まれた。」
物語は島の集落を訪ね、人夫や木材伐採の協力を得て、造船所を造ることから始まる。激しい空襲に見舞われながらの船造り、途中何度もくじけながらも、大自然と共に生きる現地の人々の生き様に触れ、触発される日々。
戦争が怖くて逃げ出したい男が、思いとは裏腹に悲惨な戦争に巻き込まれながらも、ひょうきんな性格ゆえの人との触れ合い、出来事に感動した気持ちが素直に表現される。
作者独特の軽快な言葉運びで紡いでいく、戦争記でありながらも、人間味がにじむポエムストーリー。第○回壺井繁治賞受賞作品。
The Chilling Twist
